ZBRoux Methodの紹介
本記事では3×3解法ZBRoux Methodを紹介します。
こんにちは、とむと申します。ZBRouxってのは現時点では日本に使用者が僕一人しかいないマイナー解法です。当然日本語記事も無かったので紹介記事を書いてみました。紹介が必要なほど複雑な解法では無いんですが、マイナー解法に触れるキッカケとなればと思います。
Roux未経験の方を想定した紹介です。前半は緩い説明が続くので玄人の方は1〜3は飛ばしてもらって大丈夫です。
1. 理解に必要な用語の説明
本記事の理解に必要となるキューブ用語をCFOP解法を基準にして簡単に説明します。
【EO, CO, EP, CP】
アルファベットはそれぞれ以下の単語を表します。
E:Edge
C:Corner
O:Orientation
P:Permutation
Orientationはパーツの向き、Permutationはパーツの位置を意味します。
Permutationは正確には順列を意味しますが、キューブを解く上では位置(を正す)という解釈で全く問題ないと思います。
CFOP(LBL)解法におけるOLL,PLLもこのアルファベットに従っています。
OLLはOrientation of the Last LayerでU面の8つのパーツの向きを揃えます。
OLLではEO,COを揃える、即ちエッジとコーナーの向きを揃えるため、U面が1色に染まります。
PLLはPermutation of the Last LayerでU面の8つのパーツの位置を正します。
PLLではEP,CPを揃える、即ちエッジとコーナーの位置関係を正すため、OLLと続けて使うことで側面の色関係が揃い完成状態になります。
EO,EP,CO,CPはキューブを解くうえで重要な概念です。
CFOP解法のLL手順ではU面の8つのパーツのEO,EP,CO,CPの揃える順序を変えたり複数を同時に処理したりなどすることで、様々な解法やサブステップが展開されています。
LLにおける有名なサブステップの内訳を下図にまとめています。
LLサブステップはこの図で言う空白部分を手順の前後で補うことで完成状態を作ります。
例えばZBLLは手順以前にEOが揃っている必要があるため、F2L4の処理と同時にEOを揃えるZBLSやVHLSなどのサブステップが存在します。
2. Roux Methodの基本
Roux Methodは以下の4ステップから成る解法です。
1)First Block (FB)
L面に1×2×3のブロックを作る
2)Second Block (SB)
R面に1×2×3のブロックを作る
3)CMLL (Corners of Last Layer Ignoring M-slice)
U面のCO, CPを合わせる
4)LSE (Last Six Edge)
MU列の回転のみを用いてU面とD面の計6つのエッジのEO,EPを合わせる
Roux MethodはL10P Methodの1つです。
L10P(Last 10 Pieces)Methodとは、F2Bを完成させた後、残りのエッジ6個コーナー4個を揃える解法の総称です。
Roux MethodはL10Pを以下のように振り分けて解く解法です。
①CMLL:4つのコーナー(CO,CP)
②LSE:6つのエッジ(EO,EP)
3. EOの概念
Rouxは一旦さておき、EOのそもそもについて簡単に説明しておきます。
開眼種目においてEOは特に重要視される概念です。
EOは先にも書いた通りエッジの向きを考えます。
①EO反転とは
簡単なEO反転の例を紹介します。
十字ではないOLLは持ち替えをせずRLUD面の回転だけを使ってU面に十字を作ることは、キューブの構造上できません。
このとき十字を作るために反転が必要なエッジがEO反転が起こったエッジです。
そのため十字を作るためには中列やFB面の回転が必要となります。
EO反転が起こったエッジをBad Edgeと呼びます。
Bad Edgeは持ち替えを制限した場合において、RLUD面の回転だけでは修正することができません。
Bad Edgeはどの位置にあるエッジに対しても同じ方法で特定することができます。
RLUD回転によってセンターの色と隣り合わせな状態を作れないエッジは全てBad Edgeです。
全エッジにおけるBad Edgeが0個の時は、一度も持ち替えることなくキューブを完成させることができます。
これを用いた解法がZZ Methodです。インスペクションでは全てのBad Edgeを特定し、EOを直したあと持ち替えることなくF2LとLLを完成させます。
CFOPのF2LにおいてもEOの概念は重要です。EO反転がなければ持ち替えの必要がない、あれば必要なので理解することで不必要な持ち替えを減らして効率的なソルブになるでしょう。(閑話休題)
②RouxにおけるEO
LBL法のLLでは、U面の4つのエッジのみを見ればいいのでBad Edgeはすべて目視できます。
しかしRouxではD面のエッジも関係してくるため、すべてのBad Edgeを目視することはできません。
EO反転は必ず偶数箇所で起こります。
Rouxではこれを利用してBad Edgeの位置を特定できます。
RouxではU面色とD面色のみに注目してBad Edgeを特定し、MU列の回転のみによってEOを修正します。
例えば上の画像の状態で言うとUDは白と黄色で、EOが全て正しい時はU面とD面にあるエッジは白と黄色のステッカーのみになるはずですが、上の画像ではU面に3つ、そうでないステッカーがあります。
また、EO反転は偶数個ずつ起こるため、D面に1つBad Edgeがあるということが分かります。
この場合はDFエッジがBad Edgeです。EOがあっていればDFに黄と白は無いはずです。
4. ZBRoux Method解説
ZBRouxは以下の4つのステップから成り、平均41~45手で解けるようです。
1)First Block(FB)
L面に1×2×3のブロックを作る
2)Second Block(SB)
R面に1×2×3のブロックを作る
3)EODFDB
残り6個のエッジのEOを処理すると同時にDFDBエッジをDレイヤーに配置
(この段階でF2Lが完成されると同時に十字OLLが現れる)
4)ZBLL(Zborowski-Bruchem Last Layer)
十字OLLを1Lookで解く
ZBRoux MethodはRoux Methodと同様にL10P Methodの1つです。
EO,EP,CO,CPの振り分け方が異なります。
先ほど紹介したRoux Methodでは以下のように振り分けられます。
① CO,CP処理(CMLL)
② EO,EP処理(LSE)
ZBRoux Methodでは以下のように振り分けます。
① EO処理(EODFDB)
② EP,CO,CP処理(ZBLL)
【本解法の各ステップ解説】
1)First Block(FB)
Roux Methodと同じであるため省略します。
2)Second Block(SB)
Roux Methodと同じであるため省略します。
3)EODFDB
このステップではL10Pの内、EOのみを処理し同時にDFDBエッジをDレイヤーのあるべき位置へセットします。6EO+2EPです。
・基本
EODFDBの基本は、Roux MethodのEO手順をした後に、MU列の回転を使いDFDBエッジをそれぞれ入れます。深く考える必要はありません。
EO手順とDFDBエッジのセットを手順のキャンセルなど工夫して手数を減らすことで発展させられます。
・EOLRについて
EODFDBではRouxにおけるEOLRによる処理が可能ですが、EOLRと比較して自由度が大幅に落ちます。
EOLRとはEO処理と同時にULURエッジをDFDBにセットするサブステップです。その後M2でULURエッジが完成するので非常に効果的です。
EOLRにおいてDFDBにセットするULURエッジは位置が逆でも問題ないのに対し、EODFDBではDFDBエッジは正しい位置にある必要があります。これにより同じEOLRケースにおいて、配色が逆になった状態の手順を使い分ける必要があり、難易度が劇的に上がります。
更にセンターの位置も合わせる必要があるため、それを考慮した適切な処理を行う必要があります。
EOLRを応用するにはこれだけの判断に加え手順が必要です。ただこれだけ苦労した割に6EO2EPしか揃ってないのでコスパはかなり悪いように思えます。
・脱MU手順
MU列の回転のみを用いるとコーナーの関係が崩れないため先読みがしやすくなりますが、どうしても手数が多くなってしまう場合があります。
MU列回転の範囲を超え、RrD回転などを使用することで、より少ない手数でEODFDBを完成させられる場合がありますが多くの場合コーナーの関係が崩れてしまいます。
このステップについては本記事では省略します。
4)ZBLL(Zborowski-Bruchem Last Layer)
十字OLLから1Lookで完成状態にします。
難しく言い換えるとEP,CO,CPの同時処理です。
ZBLL自体は有名なサブステップで知っている人も使用者も多く、日本語記事もたくさんあるためここでは説明を省略し、ZBRouxにおけるZBLLについて説明します。
ZBRouxの大きな特徴として「ZBLLの先読みが比較的容易」というのがあります。
MU列回転のみでEODFDBをすると前後でコーナーの関係は一切崩れないため、F2B終了時点でLL手順は最大12ケースに限られます。
EODFDBを回す直前、もしくはEODFDBを回している間にコーナーの関係を把握することができれば、ZBLL判断が早くそして楽になります(理屈では)。
ZBLLの完読みは難しいですがコーナーの関係を把握していればEODFDB手順を工夫することで、出現するZBLLを意図的に絞ることもできます。
ZBLLの先読みの例を以下のExample Solvesに軽く載せてます。
5. Example Solves
①Scramble : L' B2 U B2 U2 B' R F2 B2 R2 D2 F2 R2 D L2 D2 L2 F' D
z2 x' R U' R' U M U2 B R' U' M F//FB
R U R' U' R U' R' U R U r U R'//SB
U M' U' M' U M' U2 M//EODFDB
U' r U R' U' r' F R F' U2//ZBLL AUF
F2B終了時点でT-FLFRであるとわかります。
赤線を引いた部分でEOを合わせてDBエッジを入れました。
次のUでR面にバーができていることが分かります。
この時、UFRとBRUが同色であることがすでに分かっているため、M' U2 Mで2×2のブロックができるのが分かります。
このソルブではEODFDBを回しながらZBLLを完読みすることができました。
②Scramble : D2 L2 D U2 B2 D' L2 R' D U' R F' L2 D R' D' U' R'
y' U L u L U L' M U2 L U' L'//FB
R2 U M' U R2 U R' U R U2 r' U' r R U' R' U R U R'//SB
M U' M' U' M2//EODFDB
U' R' F R U R' U' R' F' R2 U' R' U2 R U'//ZBLL AUF
F2B完成時点でT-RLFFとわかります。
この場合M U M' U' M2でも解けますが、R面のヘッドライトとULエッジからM U' M'とすることで1×1×3バーが作れます。
よって以下の3種類のZBLLまで絞れました。
6. おわりに
本解法はある程度技術が追い付いてくると平均手数がかなり少なくなる上、ZBLLの先読みが他の解法に比べはるかに簡単なので非常に面白い解法だと思います。
非常にマイナーな解法ですがF2BやZBLL使えるとそれなりに楽しいので、普通の解法に飽きたりタイムに伸び悩んだ時に気軽に触れてみてください。
この記事を読んで少しでも「面白い解法だな」と思っていただけたら幸いです。
以上でZBRoux Methodの紹介記事を終わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
追記 : しばらくzbrouxを使用した主の感想
・たのしい。
・早くなりたければF2Bを練習するべき。あとZBLLいっぱい覚える。
・EODFDBは工夫したところでほぼタイムに影響しない。基本はRouxのEO手順でいい。狙ったEOLRも要らない。工夫せずとも無心でガチャガチャしてればちょっとずつ見えてくる。
・ZBLLの練度が割と効いてくる。慣れたZBLLの時はsub10も珍しくない。
・毎回ZBLLが出てくるのでかなり練習になる。手順知らないZBLLでも短時間の判断ができるようになった。これが手順覚えるキッカケになるんだな〜。
・ZBLLの時点で抵抗あるかもだけど、CFOPの経験がそれなりにあればF2B練習するだけでいいタイム出るし、COLL使えるならそんな苦労せずともsub10も狙える。
・zbroux人口増えろ〜
参考にしたWebページ
ZBRoux - Speedsolving.com Wiki
https://www.reddit.com/r/Cubers/comments/8wysur/new_variation_for_roux_method/